Analysis of the Site
敷地環境を読み解く

郊外の、空が広く家々がゆったりと建ち並ぶ住宅地の一角。そこへ木造2階建て、建築面積27坪、延べ床面積44坪の住まいを計画しました。
プランニングの過程でもっとも意識したのは、敷地が南北に長く東と南が開放的であること/道路との高低差があり、車のアプローチが南西部分に限られることです。もっとも環境がよいと思われる開放的で明るい南東部に住まいのどの要素を配置するべきか、またその要素と南西部のメインアプローチとが重なり合う部分をどのように魅力的に演出するのかが大きな課題であると考えました。さまざまな敷地環境を丁寧に読み解き、課題をひとつひとつ素直に丁寧に解決し、環境特性を最大限活かしていくこと。そのなかで、自然にこの住まいのかたちが浮かび上がってきました。
テーマは〈フロントヤードの家〉です。南側は日当たりもよく、高低差のおかげもあって、プライバシーを守りやすい環境にあります。ここを前庭にすることによって、建物をコンパクトにしつつ、最も効率良く要素を配置することができました。このフロントヤードは一部屋根がかかっていて、〈眺めるだけ〉の庭ではなく、28帖のLDKに連結するさらに28帖の〈アウトドアリビング〉として積極的に活用することができる空間です。合わせて56帖の大空間を、楽しみながら暮らしていただけたらと考えています。
敷地環境と環境特性を読み解くなかで、導き出されたファサード。積み木のようにずれながら積み重なっているボリュームが印象的です。
一つ目は1階の玄関ホールとLDKを隔てるスリットパネル。天然木突板で構成されたダイナミックな木目に合わせ、ランダムに隙間をデザインすることでちょうど良い抜け感となり、玄関ホールと廊下をLDKに取り込んで広く見せることができました。冷暖房効率を上げるためにスリットの部分に入ったスモークガラスが、モダンでクールな印象となっています。
玄関アプローチを取り込むことでフロントヤードを最大化、また1FのLDKもそれ以外の要素をすべて2Fに配置することで最大化したため、LDK+フロントヤードの合計56帖の大空間をつくることができました。
フロントヤードは西側をクローズにして西日をカット、プライバシーの守りやすい南東側をオープンにすることで、広い空と朝の日差しを存分に楽しめる空間となっています。上部には斜めに大きな屋根(2階部分)がかかるので、アウトドアリビングとして利用できるでしょう。
外から帰ってくるときは、広めのステップを5段上り、背の高いオートロックの引戸門扉をくぐると、アウトドア家具が配されたフロントヤードが迎え入れてくれます。LDKから窓越しにお見送りをしたり、帰ってくるところを迎えたりすることができる配置になっています。
広い住まいですので、どうしても廊下が必要になってしまいます。暗くて長い廊下は気が滅入るものですし、空間としてももったいないものです。そこで、2階の階段ホールと将来的に個室として仕切る予定のスペースを繋げ、ライブラリーとしてしつらえました。当面納戸としてしか使い道のない個室をつくるより、こうすることで毎日通る階段ホールが開放的で素敵な空間となります(将来個室をつくり、ちいさくなったライブラリでも十分機能するようにレイアウトしています)。
奥様はパンづくりが趣味で、腕もプロ級です。コンロ下の大きな家庭用オーブンと置き型のオーブンレンジの他にも、業務用オーブンを設置するための場所を確保しています。パンをこねる専用の作業台は、パン生地の温度管理のため、石でつくられています。
こだわりのオーディオ機器と壁面のオーダーメード家具に並ぶ大量のCD/DVDコレクションに囲まれたオーディオルームは、ご主人が大好きなクラシック音楽に没入するための部屋です。壁と扉は簡易ながらも防音機能を備えています。
施工 | 株式会社須々木工務店 |
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キッチン | BAROS |
所在地 | 神戸市 |
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用途 | 専用住宅 |
家族構成 | 夫婦 |
竣工年 | 2022 |
構造 | 木造/地上2階 |
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敷地面積 | 62.9坪 |
延床面積 | 45.3坪 |
総工費 | 4500万円(税込) |