Analysis of the Site
敷地環境を読み解く

敷地は住宅地の奥まった一角にあります。周辺は昔ながらの露地を残した下町ですが、近年は徐々に新しい家々に建て変わりつつあり、今と昔が融合した雰囲気の町並みとなっています。
そんな敷地に、木造2階建て・建築面積18坪・延べ床面積32坪の家を提案しました。プランニングの過程でもっとも意識したのは、坂の町・神戸の特徴である高低差をいかに解決するかということ。また、この敷地は、北と南が道路に面している珍しい敷地でもあります。この難しい問題を逆手にとり、楽しい空間構成としたいところです。
一方、周辺が建て詰まった住宅地では、いかにプライバシーを守りつつ、光を取り入れるかということも大きな課題となります。周囲には3階建てのアパートや戸建住宅があり、そこから見下ろされてしまうということも解決したいポイントでした。
これらのことを丁寧に読み解き、問題を一つ一つ素直に解決していくことで、クライアントのおふたりにぴったりなかたちを浮かび上がらせました。
コンセプトは〈Roofcourtの家〉。周囲から見下ろされることなく、光がたくさんある場所を見つけ出し、そこにプライバシーの守られた中庭(court)をつくりました。日曜の朝に外の冷たい空気を感じながら朝食をしたり、夕涼みをしながらロウソクの明かりで夕食をしたり、友人たちとのBBQを楽しんだり──この8帖の白い壁で囲まれたRoofcourtが、敷地が抱える様々な問題を解決していきます。
19.1帖のLDKは、Roofcourt8帖をプラスすると27.1帖もの広がりをもつ空間となります。LDKとウッドデッキを繋ぐ開口部は幅2.2m・高さ2.4m。二枚の扉を壁に引き込んでフルオープンにすることができ、自然と外に出たくなるような繋がりがうまれます。
Roofcourtは四方を壁に囲まれたプライベートな空間で、そのためLDKについても完全にプライバシーが守られます。Roofcourtの近くにはあえてダイニングキッチンを配置しました。このキッチンを中心とした空間構成が、楽しい空間となる「しかけ」です。
夜にソファでくつろぐ〈静〉の空間であるリビングスペースに対し、食事やサービスの拠点として、またゲストなどと語らう場として、ダイニングキッチンスペースは〈動〉の空間となります。その〈動〉の空間に触発されて、隣接するRoofcourtも〈動〉の空間となるはずです。Roofcourtがダイニングの延長として使えるので、活躍する回数もおのずと増えていくでしょう。
敷地は、メインの北側アプローチとサブの南側アプローチで1.5mの高低差があります。この条件を逆手にとり、玄関から1.5階の高さにあるLDKを実現しました。将来のことを考えると2階リビングはすこし不安、でもこの敷地で1階リビングだと暗くなりそう──その2つの不安を一気に解消できる断面計画となりました。
玄関から1.4mあがるとLDK、さらに1.35mあがると、ロフトのような空間の趣味の書斎があります。ここからLDKは見渡せますが、LDKからは見上げる位置ですから、多少物を散らかしていてもわからない空間構成になっています。また個室と浴室は玄関から1.4m下ったところにあります。
趣味の書斎の外にはRoofcourtに面したテラスがあります。ちょっとした大工作業も、わざわざ外へ出ていく必要はありません。屋根もあるので多少の雨でも作業はできます。午前中は日当たりも良いので、洗濯物を干してもいいかもしれません。
はじめリフォームを検討していた際、メーカー、工務店、建築家さんそれぞれにプラン出しを依頼しようと考え、兵庫県、大阪でお仕事されてる大勢の建築家の中で石さんを選びました。建築家さんで石さんを選んだのは、ホームページがちゃんと更新されていてわかりやすく、お仕事もきちんとされているだろうなと印象を受けたのと、お願いしたい現地と石さんの事務所が近かったこと。なにより石さんの手がけたお家が私たち夫婦の好みに合っていたことです。
事務所での初めての顔合わせも、その後の現地視察も、カタツムリの家を見学に行かせていただいた時も、最初のプラン出しも、どこに頼むか検討中の顧客への対応が、あっさりしていながらも細やかでこちらの質問に対して飾らず答えてくださる気軽さなど、とても好ましく感じたのを覚えています。
依頼の決め手としては、工務店さんやメーカーさんよりも自由度が高く、途中から建て替えも考え出した私たちへの臨機応変な提案力、その内容などが大きかったと思います。あとは、距離的な近さもあってか、フットワーク軽く動いて下さったこともあります。
完成に至るまでの時間はメーカーさんとかに比べるとどうしても掛かってしまうので、まだあと◯ヶ月もある…とか、当時台風被害の関係で業者さんが捕まらず工期がだいぶ伸びてしまうなどありましたが、インテリアに興味があり様々なことを自分で決めたい私としては、石さんに相談させてもらいながら、毎週の様に色んなショールームへ行って1つひとつ決めていく作業はとても楽しく、ホントに一生に一度した出来ない得難い経験が出来ました!他の建築家さんを知らないので比べようはないですが、メール等で質問や相談すると的確に大体すぐにお返事いただけるので、とても物事を進めやすかったです。
住みだして今年の12月で1年になりますが、住むことを楽しめる、毎日を丁寧に暮らせる、そんな家だと思います。これからも大切に住みたいと思います。石さんに依頼して良かったです。ありがとうございました。
施工 | 株式会社ギャラリア |
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所在地 | 神戸市 |
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用途 | 専用住宅 |
家族構成 | 夫婦+子供1人 |
竣工年 | 2019 |
構造 | 木造/地上2階 |
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敷地面積 | 35.6坪 |
延床面積 | 35.2坪 |
総工費 | 2850万円(税込) +450万円(宅地造成) |