Correlation Diagram of Plan
間取りの相関図

マンションのリノベーションです。めざしたのはLDKを最大化すること。廊下を減らして部屋に取り込み、また部屋から部屋へ直接移動する導線を取り入れることでスペースを有効利用しました。空間の見え方としても、〈Slit〉のある壁を配することにより、「広く見える」工夫をおこなっています。
プライバシーを確保するための壁は、〈視線や音〉を遮ることをめざすものですが、かといってそれを完全にしてしまうと、空間が狭くなってしまいます。今回、LDKを少しでも広くみせるため、最低限のプライバシーを確保しつつ、〈Slit〉によって抜け感のある壁をデザインすることにしました。
ひとつめはこのスリットパネルです。天然木突板で構成された木目に合わせ、スリットをダイナミックにデザインすることで、ある方向からは透けて見える壁となっています。これにより、(洗面脱衣室内部が丸見えにならないようにしつつ)その前の廊下をLDKに取り込み、空間が広く見えるようになりました。
一方、スリットパネルの前はゲストが宿泊する際に布団を敷くスペースとなっているのですが、たとえば夜間にキッチンや脱衣室を使っても、寝ているゲストのプライバシーが守られるような構造になっています。
もうひとつは書斎とLDKを仕切る壁です。高さ1.9mの低い壁によって天井がつながって見え、LDKの〈広さ〉は損なわれません。書斎としても最低限の広さしかありませんから、天井の繋がりはホッとすることと思います。一方、機能的に音は遮りたいので、ガラスを嵌めています。また壁の上には間接照明を仕込んでいます。
ダイニングテーブルにはTECTAのM21を選びました。1979年にドイツのTECTA社によってつくられたこのテーブルは、アシンメトリーで独特の形をしています。デザインは高名なフランス人建築家のジャン・プルーヴェ。
特徴は、一緒にいるのにプライベートも保たれるという、その天板の絶妙な形状です。どこに座っても全員の顔が見え、自然と目線が交わり会話が弾みます。しかし席が固定されないので、ゆっくりしゃべりたいときは隣に座り、作業をする時は少し離れてナナメに座るなど、気分に合わせて自然に距離を保てるようになっているのです。またその丸いデザインは、空間に優しく柔らかい雰囲気を付加してくれる効果もあります。
石さんに図面とCGイメージを提案された時、自分の住みたい家を教えてもらったように感じました。依頼した当初は具体的な家のイメージが持てなかったため、家族のことや普段の生活のことばかり話した気がしますが、その対話の中から石さんが形にして見せてくれました。
元の間取りや準備できる予算に限りがあったことで、制約が多い設計だったと思います。その制約の中でも合理的な設計をしていただきました。今でも時々、図面を見返しては無駄のなさに惚れ惚れしています。予算的に厳しい部分は様々な代替案を示しながら、これもまた対話しながら作り上げていただきました。
リビングと書斎は特に気に入っています。家族が別々のことをしていても一緒にいることを感じられる、それでいて窮屈さを感じないところがお気に入りです。書斎はリモートワークで大活躍しています。1つの部屋を書斎にしてしまうのは間取り的に難しく、かといってリビングでビデオ会議は難しい、といった中で最適な形だと感じています。リモートワークが増える中、おすすめしたい書斎です。
気になった中古マンションの購入を迷っている最中、ネットで色々と検索したら石さんのHPに辿り着き、センスの良さに惹かれ、もしリノベーションするならここ!と購入する前に決めました(笑)。その後無事にマンションの購入ができ、石さんにデザインをお願いすることになりました。
提案されたデザインをはじめて見た時の感動と驚きは今でも鮮明に覚えています。限られた予算の中で、初回の打ち合わせで詳しくヒアリングした家族の生活スタイルや性格、家に求める思いなど、全て入れ込んで、スペースを合理的かつ最大限に利用してくれました。もちろんセンス良く!!
海外にいる家族が遊びに来る時に客室としても使える部屋を作りたいと相談しましたが、それだと普段使用しないスペースになって勿体ないとアドバイスをしてくれて、リビングに目隠しのスリットを作って、来客の際はその前に布団を敷いたら客室代わりにもなるなど、より生活しやすい空間になる提案を色々としてくれました。そのおかげで、今では毎日広々なリビングで快適に過ごしています。
そして石さんと打ち合わせを重ねていくうちに実感したのは人柄の良さと柔軟の対応。細かい事や心配ごとがあるとすぐ連絡する私にいつも安心できる返答をくれたり、細かい寸法やデザイン変更にも柔軟に対応してくれました。また質問がある際には難しい業界用語など使用せず、私達素人でも分かりやすいように詳しく説明してくれました。
よく「オシャレは我慢」と言いますが、石さんのデザインはオシャレで快適です。「Slit wallのある家 Re:」住み始めてからもうすぐ一年になりますが、毎日家に帰るのが楽しみで、家にいる時間が快適で大好きです。家族の思いをカタチにしてくれた石さんに感謝です。
施工 | 株式会社須々木工務店 |
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所在地 | 神戸市 |
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用途 | 専用住宅 |
家族構成 | 夫婦+子供1人 |
竣工年 | 2021 |
構造 | RC造マンション(改装) |
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敷地面積 | ── |
延床面積 | 26坪 |
総工費 | 710万円(税込) |