Analysis of the Site
敷地環境を読み解く

Photo by Akiyoshi Fukuzawa
空が広がるのどかな住宅地の一角に建つ住まいのリノベーションと、アウトドアリビング増築の提案です。
クライアントのお住まいは、見下ろしの眺望がすばらしい丘の上にあります。アメリカの西海岸に長期的に居住されていたクライアントは、その際、積極的に屋外を利用して楽しむ現地のライフスタイルをとても良いと感じられていたそうです。日本では気候が違うので使える期間は少ないかもしれないが、このせっかくの眺めをいかし、自然の光と風を感じながら過ごす暮らしを積極的に取り入れていきたいというご希望でした。
建物は欧米風の輸入住宅。広々とした庭があるので、そこへアウトドアリビングを増築することになりました。
とはいえ、単に庭の空いている部分に東屋を建てるだけでは〈アウトドアリビング〉として機能はしません。たとえばそこで食事を楽しみたいと考えても、キッチンからのアクセスがしづらくては、使い勝手もよくないでしょう。計画にあたっては、もともとのリビングダイニングの拡張として一体的に使えるよう、母屋側のリノベーションについても同時に考えていきました。
また、丘の勾配に沿って東西方向に長いこの庭は〈空気が流れる軸〉として機能しているため、その流れを遮らないことにも気をつけました。さらに、増築によって母屋側の室内空間が暗くなることも避けなければなりません。構造の専門家とも相談した結果、既存の壁位置の変更や開口部の大きさ変更はできないため、間取り変更以外の工夫をすることが求められました。
タイトルは〈石積みのアウトドアリビングの家 Re:〉です。
アウトドアリビングを配置することにより、広い庭を東側の法面の庭〈Slope Garden〉と西側の平面の庭〈Active Garden〉に分割し、それぞれ異なる役割を持たせました。13.5帖の広さをもつアウトドアリビングはその両方を楽しむことができる絶好の位置となっています。母屋では、もともと独立していたキッチンをダイニングキッチン化し、アウトドアリビングへつながる拠点となるよう機能と関係を再構築しました。もともとの建築が持つポテンシャルを見極め、継承すべきものは継承しつつ、さらに魅力を引き出すことをめざした提案です。
朝陽を浴びながらの朝食も爽やかですし、本格的なBBQセットを置いて日常の調理の場として使うのもよいでしょう。ぜひ、アウトドアリビング・ライフを積極的に楽しんでいただきたいと思います。
アウトドアリビングのデザインは、輸入住宅のクラシックな欧米スタイルをモダンにアレンジしました。本当に石を積んだような分厚い壁と、リズミカルに連続する化粧垂木が印象的なものとなりました。母屋への光の減少を最小限に抑えるため、屋根の約半分をガラス素材とし、そこを通して入る優しい光が美しい陰影を生み出す空間となっています。
アウトドアリビングの東側には眺望を楽しめる〈Slope Garden〉が、西側にはドッグランを兼ねた〈Active Garden〉が広がっています。南側には隣家からの目隠しとなるレンガの壁を配置しているため、くつろいで過ごすことができるでしょう。
リビングルームについては、もともとの輸入住宅らしい欧米風デザインとフローリングを最大限活用し、リノベーションを行いました。また、新たなくつろぎの要素として、エタノール暖炉をリビングの中心に設置しています。デザインはアウトドアリビングで使ったレンガタイルを使い、統一感を持たせています。
ダイニングキッチンには、アウトドアリビングの光あふれる空間を眺めながら食事ができるよう、オリジナルのダイニングテーブルを設置しました。室内での食事も豊かにしてくれることでしょう。
施工 | 株式会社須々木工務店 |
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キッチン | BAROS |
所在地 | 北摂地域 |
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用途 | 専用住宅 |
家族構成 | 夫婦 |
竣工年 | 2024 |
構造 | 木造/地上2階(改装) |
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敷地面積 | 172坪 |
延床面積 | 既存部分46.6坪+増築6.3坪 |
総工費 | 3500万円(税込/外壁塗装・植栽外構工事含む) |