Analysis of the Site
敷地環境を読み解く

Photo by Akiyoshi Fukuzawa
淡路島の北端近く、海の近くに建つ住まいです。
敷地は空が広いのどかな住宅地の一角ですが、島内の幹線道路に面していて、とても便利で目立つ場所です。淡路島は昔からリゾート地としても有名ですが、近年その魅力が再発見され、多くの人が移り住み、関西で最も注目を集めている場所のひとつと言えます。そんな場所に、木造平屋建て、建築面積170平方メートル/延べ床面積138平方メートルにおよぶ住まいを提案しました。
プランニングの過程でまず意識したのは、幹線道路の喧騒や視線から守られた領域をいかに確保し、広い庭を配置するかということ。一方その幹線道路からの見映えをよくしつつ、車をゆったり停めることができるスペースをつくることも大事な課題としました。その他の敷地環境や課題についても、いつものように丁寧に読み解き、環境特性を最大限活かすことのできるプランを探りました。
名づけて〈淡路島・大磯の平屋〉です。全体の構成としては、機能面から空間を4つのエレメントに分け、それぞれを独立したボリュームとして表現。それらを配置してうまれた〈余白〉を、庭や移動空間としています。そのため、廊下や浴室を含めたほとんどの空間がふたつある庭のいずれかに面し、広い平屋の住まいでありながらどこにいても光と風を感じられる住まいとなりました。また外観としても、そのモダンかつリズミカルな構成が、淡路島の山々と調和するものになったのではないでしょうか。
メインの庭とつながるLDKは、天井高最大3.7m、34.6帖もの広がりのある空間を実現しました。最も長い時間を過ごすLDKと主寝室を近くに配置し、ペットの遊び回る大きな庭との繋がりを密にすることで、コンパクトで便利な動線となっています。一方、日常生活で長時間居ることのない要素(カーポート/ゲストルーム/ウォークインクロゼット)は、騒音や視線に対する緩衝ともなるよう、幹線道路側に寄せて配置しました。
平屋のメリットを最大限引き出した、贅沢な邸宅の計画です。
今回は広い敷地をいかして、ひとつの大きいボリュームをつくるのではなく、機能ごとのエレメントに分節して構成することにしました。ボリュームがわかれることによってその間に〈余白〉がうまれます。広い建物では内部をどのように明るくしていくかが課題となりがちですが、この〈余白〉によって導かれた光が、住まいを満たしてくれました。
外観についても、分節したボリュームとその余白によってリズムがうまれ、威圧感のない、周辺の環境に調和したものとなりました。
この敷地内で最も環境の良いメインの庭。そこへLの字のかたちで面するのは、もちろんこの家で最も重要であるLDKと主寝室です。敷地が北西ー南東方向に長いので、庭も必然的に敷地に沿った長方形となります。そこで庭に接する間口が広く取れる長辺側をLDKに、もう一方を主寝室としました。L型の配置は、ふたつの空間が相互に見えるという関係になります。自分の家を見ながら生活できるというのはとても贅沢なことではないでしょうか。
いずれも床面と同じ高さにつくられた縁側テラスを内部空間の延長のように利用でき、とくに幅8m/高さ2.55mもある木製ヘーベシーベサッシをしつらえたLDKは、それをフルオープンすることによってとても開放的な空間となります。
それぞれ南東/南西を向く部屋ですが、季節ごとの太陽高度を計算した庇がかけられており、夏の高い陽射しはカット、冬の低い陽射しは奥まで入るようになっています。内部はどちらも勾配天井がとても印象的なしつらえです。
広い住まいでは廊下が長くなりがちです。しかし「移動に使うだけ」の「暗い」空間は、できるだけ最小限にしたい。今回の課題は、玄関からウォークインクロゼットへの動線を、いかに無駄な廊下をつくることなく計画するか、ということでした。
そこで玄関と繋がるシューズクロゼットを通り抜けできる〈廊下〉のように使うことを考えました。そのおかげでウォークインクロゼットからシューズクロゼットを経由してダイレクトに玄関にアクセスできます。クライアントのご夫婦は出張やご旅行が多く、便利に使っていただけるでしょう。
一方、玄関とLDKを繋げる最小限の廊下も、玄関に隣接して中庭を設けることで明るい空間とすることができました。この中庭には浴室も隣接しており、憩いのひとときを演出しています。
施工 | 株式会社須々木工務店 |
---|---|
キッチン | リシェルSI |
所在地 | 淡路市 |
---|---|
用途 | 専用住宅 |
家族構成 | 夫婦 |
竣工年 | 2017 |
構造 | 木造/平屋 |
---|---|
敷地面積 | 142.0坪 |
延床面積 | 45.7坪 |
総工費 | ── |