Analysis of the Site
敷地環境を読み解く

敷地は神戸市郊外の住宅地の一角にあります。広い敷地にゆったりと住宅が建ち並ぶ、空が広いのどかな場所です。そんな敷地に木造2階建て、建築面積19.9坪、延べ床面積36.7坪の家を計画しました。
プランニングの過程でもっとも意識したのは3点。敷地内にご両親が住む住宅があり、とくに南側の庭はお互いに気を使いながら交流する空間となること、一方、敷地の西側には川が流れ、対岸隣地建物までの距離がそれなりに確保でき、またそれらの建物も川に対して背面で接しているため、プライバシーの確保がしやすいこと、旗竿地であるため、街路から見える建物の範囲が非常に限られていること、です。これらをはじめ、多くの敷地環境や課題を丁寧に読み解き、その特性を最大限活かしていくことで、この〈かたち〉が浮かび上がってきました。
テーマは〈川沿いの二世帯住宅〉。空の広い川沿いの環境を生かし、世帯間で分断することなく/適度なプライバシーを保ちながら、ともに暮らしていける二世帯住宅。二世帯住宅の難しい部分を極力排除し、良い部分だけを抽出したような計画をめざしました。
光を望める川沿いにテラスのある庭を配しましたが、川に対して正面に構えるのではなく、すこし角度をつけた方向に開放させることにしました。これにより川の奥行きを感じつつ、対岸隣地建物との距離感も遠くなるため、落ち着いて過ごせる空間となりました。
南側の庭に対しては、あえて(大きな窓を設けず)「閉じる」ことでプライバシーを確保しつつ、一方で高い位置から光がふんだんに入ってくる仕組みとしました(下記「光を取り入れるスキップフロア」参照)。
この南側の庭へは、川側のテラスからオープンにアクセスすることができますが、テラスから直接は見えない配置となっています。このため適度にプライバシーを守ることができ、親御さんやお祖父様が気を使うことなく庭に出ることができます。お互いがリビングでくつろいでいる時にも視線を気にせず、カーテンをする必要のない開放的な生活をすることができるでしょう。もちろん庭へのアクセスはしやすくしているので、お互いの気軽な交流を阻むこともありません。
個室Bをスキップフロアにすることで、2階の廊下を最小限にすることができ、そこへLDKの吹き抜けを設けることができました。南側は「閉じ」ていますが、この吹き抜けによって南の豊かな光をたっぷり屋内へと取り入れることができます。
ペニンシュラタイプのキッチンの弱点は、キッチンを回り込む動線になることです。買い物から帰ってきた時に重い荷物を持って回り込むのはちょっと大変です。アイランドにすると回遊できて便利ですが、今度はその動線に用いるためのスペースがもったいなく感じます。そこでキッチンの奥にあるパントリーをウォークスルーとすることにより、スペースを有効利用しつつ、回遊性をもたせることができました。
帰ってきてすぐに買い貯めの生活用品をパントリーに置いて、その流れでキッチンで食料品の整理する/キッチンからパントリーを回って玄関側に抜ける──というふうに、日常の動作をより楽にこなせるプランとなりました。
施工 | 株式会社須々木工務店 |
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キッチン | クチーナ神戸 |
所在地 | 神戸市 |
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用途 | 専用住宅 |
家族構成 | 夫婦+子供 |
竣工年 | 2022 |
構造 | 木造/地上2階 |
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敷地面積 | 65.0坪 |
延床面積 | 38.0坪 |
総工費 | 4450万円(税込) |