風景を楽しむ坂の上の狭小住宅
敷地は神戸の山の手にある住宅地の一角にあります。周辺は、少し急な坂道を上れば四季折々に変化する六甲山を感じることができる、いかにも神戸らしい風景に囲まれたゆったりとした町並みが特徴です。そんな敷地に木造3階建て、建築面積17坪、延べ床面積35坪の家を計画しました。
プランニングの過程でもっとも意識したのは、がけの部分を除くと平部が25坪しかない狭小敷地であること、またその敷地が三角形で、なおかつ良く目立つ角地であることです。〈狭小〉〈三角形〉〈角地〉というとても特徴のある敷地を無駄なく活かしきる、使い切ることを考えました。また、光をとりいれ、神戸らしい景色が楽しめるようにしつつ、一方でプライバシーを守ることも課題となります。敷地環境を丁寧に読み解き、問題を一つ一つ素直に解決していくことで、自然にこのかたちが浮かび上がってきました。
タイトルは「三角形の家」。敷地の形状に沿った大胆な三角形のプランとなりました。結果として至るところに三角の余剰空間が生まれますが、その余った空間を無駄にせず、工夫し、三角であることを逆手にとることで楽しく素敵な空間となることを目指しました。また、その「三角形」には少し「切れ込み」を入れています。プライバシーを守りながら、開放的に「開く」ことで、神戸の素敵な景色もたっぷりと取り込んだ魅力的な家となりました。
ポイント
- 敷地と同じ形の三角形の建築
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この敷地はがけの部分を除く平部は25坪しかありません。そんな狭い敷地を余すところなく活用しました。ほぼ敷地いっぱいに建築したため、建築の形は敷地の形と同じ三角形です。余った部分といえば、西側のとがった部分と東側くらい。東側の空地は高度斜線制限をクリアするためにとった空地です。その空地は室外機置場として活用します。西側のとがった空地は車庫として活用することで、雨の日でも濡れることなく車に乗り込め、トランクからの荷物の出し入れも容易になりました。トランクのすぐ後ろには1帖の外部収納があるので、アウトドアの遊びにも便利です。駐輪場は得てして余ったところになりがちなのですが、今回は外部の空間を使い果たしたので、建物を掘り込んだ屋根つきの立派な駐輪場となりました。
- 三角の切れ目から見える景色
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三角には2箇所の「切れ目」があります。切れ目からは気持ちの良い景色がみえるような工夫をしています。室内における動線の方向と壁の方向によって、視線をコントロールします。1つ目の切れ目は西側にあります。神戸の空をみながら階段を上がり、上がりきると護国神社の森の方向へと視線が抜けるようになっています。同じ切れ目から、さらに別の風景も楽しめます。こちらはLDKの南側の壁に沿った動線で、六甲山へと続く坂道へ導かれ、印象的な神戸らしい街の景色を日常の生活で感じることができるでしょう。二つ目の切れ目は南側です。ごろ寝リビングとキッチンの動線、スタディーカウンターの流れに沿った方向に自然と視線が向かいます。その先には神戸の街と海を見下ろす景色が広がります。坂の上ならではの家の特権です。
- 最小限の子供部屋
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この家は、家族が集まるLDK等に多くの面積を割くため、最小限の個室としています。家族全員、ほとんどの時間をLDKで過すのですから、広くて快適な個室は必要ありません。子供部屋は1.3mのクロゼットとベッドと机が置けるだけのスペースとなっています。受験勉強と寝るためだけの空間です。
また子供たちが小さい間は子供部屋を二つ繋げて7帖の主寝室とします。ある程度成長するまで子供だけで1階に寝かせるのは少し不安です。時期が来たら1枚壁を立てるだけで子供部屋が2つできます
- 長い廊下を利用した三角ライブラリー
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- 子供部屋が3つも並ぶと長い廊下ができます。退屈な暗くて長い廊下を歩くと気分が滅入ってしまいます。そこで、三角形の余白を活かした三角ライブラリーを子供部屋に貼り付けました。子供たちは明るくて素敵な三角ライブラリーを通って子供部屋にアクセスします。2.4mの長さのある本棚とベンチは最小限の子供部屋をサポートしてくれる頼もしい空間となります。大人が読む本も子供たちの手が届くところに置いてあげると、子供たちの興味の幅を広げてくれることと思います。
PHOTO
photo: akiyoshi fukuzawa
三角形の家
所在地 | 神戸市 |
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用途 | 専用住宅 |
家族構成 | 5人 |
施工 | 有限会社タクトホーム |
キッチン | リシェル/リクシル |
竣工年 | 2020 |
構造 | 木造/地上2階 |
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敷地面積 | 26.1坪 |
延床面積 | 42.0坪 |
総工費 | 3200万円(税・外構込) |