最近は住宅を建てる際にユニット工法で工場で製造した部品を組み立てて完成する場合も多くなりましたが、以前は基礎工事から現場で木材を加工し、柱を一つ一つ組み立てて住宅を建設することが一般的であり、その一つ一つに大工さんが思いを込めて作り上げていくことが主流でした。
そうして組み上げた家は大工さんの思いと家を建てる人の思いが重なり、その出来上がっていく様は非常に崇高な物さえ感じるものです。
その為、一階部分の骨組が完成した時は住宅の基本が完成したことを示し、その一区切りとしてこれまでの労をねぎらい、また今後の工事と建物の無事を祈るための儀式を行うのが通例でした。
この儀式を上棟式と言います。
上棟式は一般に新築の際に行うもので、リフォームの場合などには行わないのが通例です。
又、最近では基礎だけを残して作り直すということも有りますがこの際も行わず、あくまでも新しくその地に家を建てる時に建築工事中に行うものです。
その方法には地域により様々ですが、基本としては魔よけのための幣束を鬼門と呼ばれる方角に向けて立て、家の四隅の柱にお酒や塩、米などをまくのが風習です。
天地四方の神を拝み、家の安全とその後の工事の安全、そしてその家に住む家族の無病息災と将来の繁栄を祈る儀式として行われてきました。
最近ではこのような意味のほか、工事に関わった大工さんの労をねぎらうことも大きな目的となり、そのため大工によってはその目的が逆転し大工がもてなされるためのイベントと取られている面が強くなってしまう傾向もあります。
しかしこれは施主である家の持ち主にとっては大きな負担となってしまうこととなったため、近年では上棟式を敢えて行わない場合も非常に多くなっています。
上棟式にはその地域により様々な風習が有り、単に儀式を行うだけではなく、近所の人や子供を集め紅白の餅をまいたり、5円玉やお菓子を撒いたりするところも有ります。
上棟式自身は大工の棟梁や現場監督がその一切を仕切ることが多いのですが、この場合には餅やお金を撒くのは施主が中心となって行うことが一般的で、これにより近所との親睦を深め、新しく引っ越してきたことの挨拶を兼ねるというところもあります。
しかし、最近では分譲住宅やユニット工法など新しい形の住宅が増え、上棟式を行わずに引っ越してくるというケースも非常に増えたこと、また余計な出費をせずにその費用を住宅ローンに回したいと考える人が増えたことなどから、新築の場合でも上棟式を見ることは殆ど無くなりました。
投稿者プロフィール
- はじめまして。兵庫県神戸市で一級建築士として活動している石憲明(せき のりあき)です。「seki.design」では、神戸市や芦屋市、西宮市を中心に、注文住宅やマンション、別荘、クリニックなど、幅広い建築物の設計・監理を行っています。
私が大切にしているのは、クライアントとの対話です。一人ひとりのライフスタイルや価値観に寄り添い、その人にとって最適な「住まいのかたち」を提案しています。デザイン性と機能性の両立を追求しながら、地域に根差し、暮らしやすさと美しさを兼ね備えた空間づくりを目指しています。
「こんな住まいが欲しい」「この空間で過ごしたい」と感じていただけるような建築をお届けしたいと考えています。
どうぞよろしくお願いいたします。
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