Plan
平面図
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3名の建築家による設計コンペを経て、コンストラクション・マネジメント方式によりつくられた住まいです。設計のテーマは「土と木と火」。自然の素材にこだわりました。
建設プロジェクトの企画から設計、施工、維持、管理までの全段階で必要とされるマネジメントを、第三者性をもつ専門家=コンストラクション・マネージャーがトータルに管理するという建築方式です。従来の請負契約と異なり、このマネージャーがクライアントの立場から建物の性能や品質、建築コストそして建築工期をマネジメントすることで、性能のより確かな住宅を、適正な価格で入手できるのがメリットです。マネージャーが各専門工事業者の金額をそのままクライアントに提示することで、価格および技術の透明性を示すことができます。
版築壁は、古代から用いられてきた工法によってつくられる堅固な土壁のことです。建築の基礎部分などにも使われます。本来、版築自体はほぼ土や石(礫)のみ、あるいはそこへ少量の石灰などを混ぜてつくられますが、現在ではセメントを混ぜたものも多くあります。築造方法はいたってシンプル。木の板で組んだ仮枠へ一回あたり10cm〜20cmの土を入れ、それを半分になるまで上から棒で突き固める、という作業を繰り返して立ち上げるというものです。
数年前に雑誌で版築壁を知り、その美しさと力強さに魅了され、いつか住まいの設計に取り込みたいと考えていました。しかし漠然としたイメージしかなく、またいざつくるとなるとその方法もわかりませんでした。そのような時、薪ストーブ業者の方と、版築壁が耐火壁になるということについて話していると、神戸で版築壁を研究している方を知っているとのこと。さっそく紹介していただき、畑中久美子先生と出会いました。
先生は神戸芸術工科大学の講師のご経歴があり、現在は設計事務所を主宰されている方です。学生時代に版築造の実験居室をセルフビルドし、また自邸の一部に版築を用いるなど、とても興味深い活動をされていました。まずは基本的な築造の方法を指導していただき、材料の配合比率や土の種類、突き固め方を変え、様々なサンプルを製作。それらを見比べ話し合いながら、設計者・工務店のみんなでイメージを固めていきました。その結果、力強く丁寧に突き固めるより、少々雑に突き固める方が壁の風合いが豊かになることがわかりました。
本番は、畑中先生、クライアント、設計者、工務店が力を合わせ、ワークショップ形式で築造しました。建物の躯体自体に負荷を掛けないように型枠をつくり、外で土を混ぜ合わせたあと、バケツで運んでは流し込み、そして突き固める──この工程を数十回と繰り返しました。最初は面白がってやっていましたが、壁が高くなるにつれ、突き固める作業が難しくなり、みんなの口も重たくなります(その昔、版築は奴隷の仕事であったそうです)。短い工期のため、全工程2日半と通常の1.5倍のスピードで行った作業でしたが、満足のいく仕上りになりました。そしてなにより、みんなで取り組むことによって、とても愛着の湧く作品となりました。
施工 | 有限会社ビームスコンストラクション |
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所在地 | 神戸市須磨区 |
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用途 | 専用住宅 |
家族構成 | 夫婦+子供1人 |
竣工年 | 2012 |
構造 | 木造/地上2階 |
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敷地面積 | 189.85m2 |
延床面積 | 112.45m2 |
総工費 | 約1950万円 |