Plan
平面図
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すまうら文庫は、この建物のクライアントである林眞紀氏が個人で主宰されている絵本書庫です。林氏は長年に渡りこの文庫を地域の子供たちに開放し、本と身近に触れ合う楽しさを教えるという活動をされています。子供たちが自由に絵本を手にとり、その保護者たちもまた互いに交流を深めることができる場所──すまうら文庫は地域にとってとても大切な役割を果たしてきました。そんな林氏の活動が30周年を迎えるにあたり、新たな場を設けることになりました。
この建物は、2011年神戸市都市デザイン賞を受賞しています。
敷地は、まるでアリーナステージのような場所です。3方を道路に囲まれ、唯一隣地に面する北側も少し離れた国道から見える位置に、さらに西隣にはペントハウスにクライアントが居住する集合住宅があり、上方からの視線も受けることになります。市街地でこのようなケースは稀であり、ポテンシャルの高い、すまうら文庫にはふさわしい敷地だと考えました。
敷地の状況から、この建築は上方を含め全方向からの視線に耐えうる立体である必要がありました。周囲の建物に比べはるかにボリュームの小さいものではあるけれど、決して町の谷間に埋没しない建築を生み出すこと。一般的な水平・垂直の形体に囚われず、まるで掘り出した鉱物のような立体を造形することによって、どの方向から見ても印象的でありつつ、ひとつの塊として力強い建築になると考えました。
屋根・壁がおりがみの折線のように平面のみで構成されているこの「塊」のイメージの原点は、「船」です。敷地が海に近いこと、子供たちにとっても馴染みのある造形であること(実は設計者とクライアントの出逢いも客船の上でした)。そのような「かたち」がこの建物を利用する人々の心の奥深い記憶に届くのではないか考えました。この「箱船」のなかでたくさんの本と出逢い、想像の世界へと旅してほしい──この建物での幼少期の空間体験が、子供たちの創造性、感性の育成に繋がっていくことを祈っています。
石さんとは彼が大学院生の時におばあちゃんと一緒に乗ってらした、ふじ丸船上で出会いました。それから10年して事務所を立ち上げられ、すまうら文庫の建築をお願いしました。出会った時にいつか自分が家を建てるときに石さんに頼みたいなと思いましたので。
私は建築の事などなにも分かりませんでしたので、予算を決めて全て石さんに任せてみようと思いました。
私の思った通り期待していた以上のものができあがりました。
船の出合いを記念して船の舳先を模したシャープな建物になりました。
すまうら文庫は子どもの本を集めた私設図書館です。内部は斜めの壁に囲まれ本棚がお部屋を囲んでいます。本に囲まれた空間はとても居心地がよく0歳から80歳までの憩いの場となっております。
オープンハウスを何軒も見学に行きましたが、どの家も石さんのオリジナリティー溢れる、洒落ていかにも石さんらしい建物でした。
これからは建築士の奥さんも子育てを終えられたら、お二人でますます素敵なお家を作っていかれることを期待します。石さんとの出会いに感謝しています。
是非見に来てください。
所在地 | 神戸市須磨区 |
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用途 | 図書館 |
竣工年 | 2008 |
構造 | RC壁構造/平屋 |
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敷地面積 | 233.66m2 |
延床面積 | 98.232 |
総工費 | 約2200万円 |