空間と関係を繋げる家
建て替えで新築した住まいの設計です。計画にあたって意識したのは、クライアントのご両親が住んでいる北側敷地との関係でした。ただ独立した家をもう一軒建てるだけではなく、やはりうまく空間を連携させていきたい。そこで建物の真ん中を切り通し、そのトンネル(=隧道)によって、アプローチとなる南側から建物の向こうの北側までを繋げていく住まいを計画しました。
切り通した〈隧道〉状の空間は、印象的な大雪山のナラ材に囲まれた間口4m/高さ2.6m/奥行6.4mのリビング・ダイニングルームとなっています。外部の庇や縁側、テラスにも屋内の仕上げを連続させ、「建築に開けた穴」のようなデザインを強調しました。夜には南側と北側に平行に配置された窓が合わせ鏡のようになって、大雪山のナラ材や斜めに切れ込んだ照明を映しこみ、〈隧道〉が無限に続いていくように感じられる仕掛けです。
- 南北の庭
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北の庭はアウトドアファニチャーを置いた「アクティブに楽しむ」ための庭で、北側に住んでいるご両親と孫とが交流できるスペースになっています。
一方の南の庭は、アプローチを兼ねた「見て楽しむ」ための庭で、〈隧道〉に光をもたらすものでもあります。狭いながらも散策の小径やこんもりとした石の小山があり、リズミカルで楽しげなものとしました。また屋久島地杉のウッドフェンスも、敷地境界から段差をつけて配置することで、プライバシーを確保しながら街に対して積極的に風景をつくっていくことを意識しています。
- 光の違棚(和室)
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黒皮鉄でできた床の間に、背面が光って浮かび上がるようなデザインの違棚をしつらえました。皮付き竹の鴨居は元々建っていた家で使っていたもの。和とモダン、過去と現代が融合しています。
- ライブラリ(2F)
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本来ならただの「長い廊下」になってしまう空間をフル活用。ピアノやベンチ、書棚があり、子供たちのピアノの練習を見てあげたり、寝る前にフカフカのカーペットの上でゴロゴロ本を読んだり、家族でカードゲームをしたり──洗濯室が隣接しているため、家事の合間にほっとひと息つく場としても。
Photographs
photo: akiyoshi fukuzawa
隧道の家
施工: 株式会社須々木工務店
所在地 | 姫路市 |
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用途 | 専用住宅 |
家族構成 | 夫婦+子供2人 |
竣工年 | 2021 |
構造 | 木造2階建て |
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敷地面積 | 80坪 |
延床面積 | 47.6坪 |
施工費 | 3800万(税込) |