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須磨の家

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自然の素材に、つつまれて暮らす

3名の建築家による設計コンペを経て、コンストラクション・マネジメント方式によりつくられた住まいです。設計のテーマは「土と木と火」。自然の素材にこだわりました。

住まいの中心には「土間」のある広々としたLDKがあり、外部から靴を履いたまま、そこまで入っていくことができます。その真ん中には280mm角のどっしりとした大黒柱がそびえ、またダイニングキッチンの無垢のナラ材を組み合わせたカウンターやテーブル、薪ストーブの背後に立つ厚い版築壁(はんちくかべ)などが、空間に奥行きを与えています。

LDKのタイルの土間は、暮らしの可能性が広がる場所です。春は大きな壺に桜の枝を挿し、夏はたらいでスイカを冷やすなど、季節の演出にもってこいです。もちろん冬にはこの住まいの主役・薪ストーブの出番。階段下に積まれた薪もインテリアの一役を担って、温かいコーヒーを飲みながら揺れる炎を眺めていると、冬山の別荘のような空間となるでしょう。

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										正面外観:
縦波のように格子の角度を変えていくことによって趣のある表情をめざしました。斜めに張り出したモダンな屋根の軒にも杉板を張り、格子と調和した「和」のテイストを意識しています。駐車スペースにはヨーロッパの枕木をあしらっています
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										北西面の外観:
須磨の美しい山並みを望むことができます
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										正面外観
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										ダイニングよりリビングを見る:
玄関からダイニング、リビングに渡ってタイル貼りの土間が続きます。土間は30mmと肉厚な桧板の階段、版築壁、薪ストーブが配され、暮らしのアクセントとなる場所です
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										リビングから吹抜けの見上げ:
タイル貼りの土間にはこの家の主役・薪ストーブが置かれています。冬の夜には家族でゆらめく炎を眺めながらのひとときを
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										版築壁:
土を固めて築き上げた版築壁は、幅2700mm×高さ2000mm、厚みも280mmあり、リビングでひときわ存在感を放ちます。昔ながらの工法でつくっているため、外観はまるで地層のようにダイナミックで、大地の力強さと美しさを感じることができます。また、重くて熱容量も大きいため、薪ストーブの背後に配することで、蓄熱装置も兼ねています。夏もひんやり冷たく室温を下げるなど、十分な調湿効果を期待できます
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										和室よりリビングダイニングを見る:
家の中心には280mm角のどっしりとした大黒柱が鎮座しています。この材木は、材木市場でクライアントと一目ぼれしたものでした。基礎から屋根まで通る、6mの一本もので、決して飾りではなく、家の重心で大黒柱本来の役割を発揮しています。背割りは埋木され、表面は丁寧にきめ細かく仕上げられているため、つい手で触れたくなってしまいます
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										吹抜けを見上げる:
大黒柱とそれに取りつく梁を吹抜けに配し、迫力と安心の感じられる空間にしました
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										2階から1階を見る:
階段の板にも30mmと肉厚な桧板を使っています。自然素材の力強さに包まれる空間です
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										ダイニングテーブル:
この一枚板のテーブルも、クライアントとともに材木市場で吟味して仕入れた70mm厚のナラ材で、棟梁によって丁寧に仕上げられています
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photo: akiyoshi fukuzawa

平面図

版築壁について[畑中久美子先生との出会い]

版築壁は、古代から用いられてきた工法によってつくられる堅固な土壁のことです。建築の基礎部分などにも使われます。本来、版築自体はほぼ土や石(礫)のみ、あるいはそこへ少量の石灰などを混ぜてつくられますが、現在ではセメントを混ぜたものも多くあります。築造方法はいたってシンプル。木の板で組んだ仮枠へ一回あたり10cm〜20cmの土を入れ、それを半分になるまで上から棒で突き固める、という作業を繰り返して立ち上げるというものです。

数年前に雑誌で版築壁を知り、その美しさと力強さに魅了され、いつか住まいの設計に取り込みたいと考えていました。しかし漠然としたイメージしかなく、またいざつくるとなるとその方法もわかりませんでした。そのような時、薪ストーブ業者の方と、版築壁が耐火壁になるということについて話していると、神戸で版築壁を研究している方を知っているとのこと。さっそく紹介していただき、畑中久美子先生と出会いました。

先生は神戸芸術工科大学の講師のご経歴があり、現在は設計事務所を主宰されている方です。学生時代に版築造の実験居室をセルフビルドし、また自邸の一部に版築を用いるなど、とても興味深い活動をされていました。まずは基本的な築造の方法を指導していただき、材料の配合比率や土の種類、突き固め方を変え、様々なサンプルを製作。それらを見比べ話し合いながら、設計者・工務店のみんなでイメージを固めていきました。その結果、力強く丁寧に突き固めるより、少々雑に突き固める方が壁の風合いが豊かになることがわかりました。

本番は、畑中先生、クライアント、設計者、工務店が力を合わせ、ワークショップ形式で築造しました。建物の躯体自体に負荷を掛けないように型枠をつくり、外で土を混ぜ合わせたあと、バケツで運んでは流し込み、そして突き固める──この工程を数十回と繰り返しました。最初は面白がってやっていましたが、壁が高くなるにつれ、突き固める作業が難しくなり、みんなの口も重たくなります(その昔、版築は奴隷の仕事であったそうです)。短い工期のため、全工程2日半と通常の1.5倍のスピードで行った作業でしたが、満足のいく仕上りになりました。そしてなにより、みんなで取り組むことによって、とても愛着の湧く作品となりました。

コンストラクション・マネジメント(CM)方式とは

建設プロジェクトの企画から設計、施工、維持、管理までの全段階で必要とされるマネジメントを、第三者性をもつ専門家=コンストラクション・マネージャーがトータルに管理するという建築方式です。従来の請負契約と異なり、このマネージャーがクライアントの立場から建物の性能や品質、建築コストそして建築工期をマネジメントすることで、性能のより確かな住宅を、適正な価格で入手できるのがメリットです。マネージャーが各専門工事業者の金額をそのままクライアントに提示することで、価格および技術の透明性を示すことができます。

須磨の家

所在地 兵庫県神戸市須磨区
用途 専用住宅
家族構成 40代夫婦+子1人
竣工年 2012
構造 木造軸組み2階建て
敷地面積 189.85平方メートル
延床面積 112.45平方メートル
総工費 約1950万円